
大手前には学習意欲の高い生徒が多く、いい友人にも恵まれ、自然と勉強に取り組むことができる環境でした。予習をし、真剣に授業を受け、家でしっかり復習するという基本的なことを日々心掛けました。私の場合、むやみやたらに暗記するのではなく、内容を理解することに重点を置いた学習を続けたことが、応用力を養う効率の良い学習につながったと考えています。社会人になってからも学ぶべきことはたくさんありますが、中高生時代とは異なり、その学びにはより主体性が求められます。ぜひとも、大手前にいるうちから自分なりの学習スキルやスタイルを身に付けることを心掛けてください。そうすることによって自ら考え学ぶ基礎が作られ、今後の人生の糧になると思います。
大手前で過ごした日々にはたくさんの大切な思い出があります。その中でも、スポーツ好きの私には運動会、クラスマッチ、野球部の活動などが特に印象に残っています。高校生最後の運動会ではリレーのアンカーを務めましたが、バトンを落として優勝を逃してしまい、大変悔しい思いをしたことを覚えています。また、私のクラスと先生方のチームでソフトボールの試合をしたことがあります。私たち生徒チームのサヨナラ勝ちだったと記憶していますが、真夏の炎天下で汗が滴り落ちる中、先生方とクラスメートで真剣に試合をしたことはいい思い出です。
私の職業である放射線診断医の仕事についてあまり馴染みのない方も多いと思いますので、簡単にご説明します。CT、MRI、PETといった画像診断機器で撮影された画像を解析して病気の診断をする仕事で、医療機器の進歩とともに近年発展してきた分野です。窪田正孝主演のテレビドラマ『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』が昨年放送されたことで放射線診断医という職業の認知度が上がり、多くの人に親しみを持っていただけるようになりました。私は当初内科医になるつもりで呼吸器を中心とした内科や救急診療に主に携わっていましたが、臨床現場では画像診断が診療方針を決定する際の鍵となることが多く、その重要性と奥深さに次第に興味を持つようになりました。病院では内科医や外科医、放射線診断医などが一堂に会して患者さんの治療方針についてディスカッションをするカンファレンスというものが定期的に行われます。そこで放射線診断医が診療画像に関して的確にコメントし、治療方針を決定づける場面に感銘を受けたことも、放射線診断医を目指すきっかけとなりました。現在は専門医として画像診断に携わり、IVR(Interventional Radiology)という画像診断機器を併用した針やカテーテルによる検査や治療も行っています。医学誌の原稿や英語論文を執筆する機会にも恵まれ、慶應義塾大学病院では海外からの留学生へのレクチャーを任せていただくことがあり、大手前で学んだ英語の基礎が役立っていることを実感しています。これからも困っている多くの患者さんを助け、一医師として医療や社会に貢献できるよう力を尽くすつもりです。
タイムスリップして高校生の自分に何かを伝えることができるのであれば、将来の選択肢の幅を広げ、それらへの理解を深めることを勧めたいと思います。
小さい頃から私の夢は医師一筋でした。医師となり10年近くが経つ現在、充実した日々を実感する一方で、中高生の頃の自分には弁護士、金融・商社マン、SE、教師などあらゆる将来の選択肢があったのではないかとも考えます。情報を収集し将来への視野を広げていれば、ワクワクする未来に向けて努力することがより楽しくなっていたかもしれません。
最後に、大手前という恵まれた環境を与えてくれる親や先生への感謝の気持ちを忘れずに、10代の限られた大切な期間を将来に向けて精一杯過ごし、そして楽しんでください。