吉馴 健太郎さん

医療法人社団 健粋会
吉馴医院 院長

吉馴 健太郎さん

Q:大手前に入学しようと思ったきっかけを教えてください。

 父親の知人に勧められて講習会に参加したことが最初のきっかけでした。

 講習会では、周りの子はとても静かに一生懸命に勉強しているし、先生はすごく丁寧に教えてくれるし、「これはおもしろそうだ」と思って、大手前という選択肢が生まれました。ただ、入学して初めての定期テストは、自分でもびっくりするほど結果が悪くて、「本当に勉強する学校なんだな」「ちゃんと勉強をしないといけないな」と実感したのを覚えています。


Q:医療の道を志すようになったきっかけを教えてください。

 吉馴医院は、私で四代目なんです。ご近所でも「将来お医者さんになるのよね」と幼い頃から言われていたり、親戚もドクターが多かったりで、自然と意識はしていましたが、勉強がうまくいかなかった時期は、「なんで医者を目指さなきゃいけないんだ」と少しひねくれていたりもしました。

 ただ、父親が手術を担当した患者さんやそのご家族が、目に涙を浮かべ「ありがとうございました」と言って退院されているのを見て、いい仕事だなという思いはありました。周りから言われるのではなく、本当に自分が医者になりたいと思ったのが高2の終わりくらいでしたが、そこからは猛勉強しました。


Q:大手前での経験は現在のご自身にどのように活かされていますか?

 中学生のとき、先生が全員にノートを持たせてくれました。そこに、毎日やることを書いて、できたら消していく、ということをすごく徹底して指導してもらいました。このノートを通して身につけた、限られた時間の中で優先順位をつけて物事を進めていく習慣は、受験勉強だけでなく仕事をする上でも活かされています。大手前では、勉強の内容よりもっと根っこのところの、あらゆることに共通する姿勢を身につけられたと思います。

 また、大学受験を通じて「努力が報われた」という、いわゆる「成功報酬」を得た体験は貴重でした。人の倍の喜びを得たかったら、人の4倍は努力しないといけない。努力が報われないこともありますが、成功した人はみんな努力していますから。

 それに、大手前だから医学部にも合格できたというのはありますね。周りの友人、勉強する雰囲気、努力をよく見てくれる先生たちのおかげです。また、仕事をしていて大手前卒業生の人脈には今も助けられています。


Q:医師を志す後輩に向けてメッセージをお願いします。

 私自身が未だ研鑽の途中ではありますが……医師を目指す後輩の皆さんに、一歩踏み込んで考えていただきたいことはいくつかあります。

 例えば最近、若い研修医が時間外労働に納得いかず、母親と一緒に労働基準局に訴えにいったという話を聞きました。これが正しいか否か、簡単に答えは出せないでしょう。しかし、自身の家族がケガや病気で緊急を要するとき、主治医に「時間外なので……」と言われたらどう思うでしょうか。ケガや病気の対応は24時間、時間に関係なく求められるため、奉仕や感謝の気持ちが無いと、医師である自分自身がつぶれてしまいます。

 私が研修医のとき、ほとんど家にも帰れず、いつ倒れてもおかしくないような環境でしたが、同期と助け合ってチーム医療を行っていました。患者さんが笑顔で退院された時は、医師になって本当に良かったと思えた瞬間でした。当然、患者さんの人生の最期に関わることもありますが、その際に「先生でよかった」と言ってもらえたときは、勝手ながら、自分がその方の人生の役に立てた気がしました。

 また、仕事は基本的に対人です。患者さん、職場の上司・同僚、製薬会社の方々など。つまり、いくら勉強ができても、コミュニケーション能力が無いと仕事は成り立ちません。

 医師を志す人に限らず、後輩の皆さんには、相手の話を根気よく聞き、相手の立場に立って考える、相手にとっての「たった一人の存在になる」ということを忘れないでほしいと思います。


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