いじめ予防

いじめ予防

いじめ予防プログラム

「いじめ予防プログラム」について過去の記事をご覧になる方は以下のリンクをクリックしてください。

いじめ予防について

「いじめ」を予防するには「科学」が必要となります。科学というと理科実験のようなものを想定されるかもしれませんが、ここでいう科学とは「客観的=誰もが理解し、判断できる」という意味です。

「いじめ」は、多くの人間関係や複数の要因があって、その実態や原因が捉えにくい特徴があります。そこで国内外の研究者が行っている客観的な研究に基づいて、ひとつひとつ紐解いていく必要があります。

和久田氏の著書には、いじめ予防には「シンキングエラー」と「アンバランスパワー」の考え方が重要であると書かれています。

「シンキングエラー」とは、「共感性のなさに基づく間違った考え」のことです。いじめの加害者は間違った考え方によっていじめを正当化し、自分がいじめをしているという認識をもつことができません。

「アンバランスパワー」とは、「力の不均衡」で、簡単に言うと、「被害者は加害者にやり返すことができない。被害者は助けを求めることができない状況に陥っている。」ということです。被害者は、さまざまな要因によって、助けを求めることができない状況になっています。もちろんそれは被害者本人の責任ではありません。

和久田氏は、「シンキングエラー」と「アンバランスパワー」の二つが存在する場合、加害者は自分の行為が「いじめ」であると認識できずにエスカレートし、被害者は助けを求めることができずに深刻な状態となることを指摘しています。

そこで「いじめ」を予防するためには、この「シンキングエラー」と「アンバランスパワー」を解消するような対策をとることが重要となります。

シンキングエラー

「シンキングエラー」とは、「共感性のなさに基づく間違った考え」のことでした。

また「アンバランスパワー」は、「被害者は加害者にやり返すことができない。被害者は本人の責任ではなく、助けを求めることができない状況に陥っている」ということでした。

「シンキングエラー」と「アンバランスパワー」の二つがそろうということは、加害者は、自分がやっている行為が「いじめ」であると認識できず、また被害者は助けを求めることができないため、いじめがエスカレートして深刻化するということでした。

今回の記事では、「シンキングエラー」についてさらに説明をしていきます。

和久田氏の著書によれば、いじめの加害者は「間違った考え」によって自分の行為を正当化するそうです。

①責任の否定、②加害の否定、③被害者の否定、④非難者への非難などによって正当化します。

具体的に言うと「仕方なくやった」「原因は相手にある」「遊んでただけ」「相手も楽しそうにしていた」など、人の気持ちを考えずに、自分勝手な考え方で正当化します。

そのため、いじめの加害行為を止めるように指導することももちろん重要になりますが、行為そのものの原因となっている「間違った考え」を修正するような指導がさらに重要となります。

「間違った考え方」は、どこからきたのかというと、「共感性のなさ」からでした。そこで「人の気持ちを考える」ということを具体的にひとつひとつ分かるように生徒と教員が一緒に考えていくことが大事になります。

これは特殊な状況ではなく、中学1年生くらいだと、自分の思っていること、自分のしている行動の原因を的確な言葉で表現することはなかなか難しいものです。そのためすべての生徒を対象として、ことあるごとに教員とともに自分の思っていること、自分の行動の原因を言葉にして適切に表現することが必要となります。それがひいては「いじめ予防」へとつながっていきます。

「アンバランスパワー」

いじめの被害者は、助けを求めることがなかなかできません。

それは本人の責任ではありません。

過去にいじめ被害を誰かに告げても、「やりかえしなさい」「つよくなりなさい」「いじめられる側にも問題がある」「誰もが経験することだよ」と言われて、大人に助けてもらえなかった経験がある。

友達から孤立していて、助けを求められる状況にない。

助けをもとめることはカッコ悪いことだと思っている。

無視されるくらいなら、いじめられたほうがまし。

いじめで傷ついていて、助けを求める気力すら無くなっている。

さまざまな要因によって、助けを求めたくても、求められない状況にあります。

この助けを求めることができない状況である「アンバランスパワー」を解消することができるのは、いじめを側で見ている傍観者と言われる生徒たちです。

傍観者が、なぜ傍観者になっているのかというと、「どうしていいかわからない」ということが主な原因です。そのためどうしたらいいかということを教えることが大切です。

側で見ていた生徒には、まず被害者に「大丈夫?」と声をかけて被害者を孤立させないことが大切だと教えます。次にいじめが起こっていることを大人に伝えるよう教えます。この二つができるようになるとアンバランスパワーが解消され、いじめが起こりにくくなります。

いじめは、被害者はもちろんのこと、加害者も、またいじめをただ目撃しただけの人にも長期的に深刻な負の影響を与えます。いじめが起こらない教室というのは安心安全で、すべての生徒にとって居心地のよい空間となります。

そのような空間をつくる責任は当然に大人にありますが、生徒たちにも協力を求め、みんなで安心安全な教室を目指すことが、学校生活の充実につながっていきます。

良い行動を増やす

「いじめ」はダメだ!と禁止したり、叱ったりすることは、その行為を止める上では必要なことです。

最新の研究では、「叱る」こと効果があるのは「危機介入」の場面など限定的な場面であることがわかっています。危機介入とは、生命の危険がある場合や誰かに危害が及んでしまう場合などに緊急に強い態度で指導することです。

一方で、最新の研究では、危機介入以外の場面で、叱り続けることには、効果がないどころか、長期的な負の影響があることもわかっています。

「いじめ」は、シンキングエラー(=共感性の欠如から正当化してしまうこと)を起こしていたり、人と良い関係を築くためのスキルが身についていないことで起こります。

叱って禁止しただけでは、どうしたらいいのかがわからないままの状態であるということになります。

どうしたらいいのかわからないままであるので、その行為を止めることができません。そのためさらに叱られることになります。そうすると叱る側と叱られる側の関係がただただ悪化していくという負のスパイラルにはまり込んでしまいます。

悪い行動を減らすには、どのようにすればよいのでしょうか?

それは良い行動を増やしていくことが解決策となります。

つまり重要となるのは、ダメなものはダメと示す一方で、「いじめ」の原因となるシンキングエラーを解消することと、人との良い関係の築くためのスキルを具体的に指導していくことです。

人との良い関係を築くためのスキルを身につけていれば、いじめ(=人との悪い関係になる行為)をする必要がなくなります。

「いじめ予防」の本質は、「共感性」を身につけること、「人との良い関係を築くためのスキル」を身につけることです。

これは加害者や被害者という枠組みだけでなく、すべての生徒にとって有用であり、居心地の良い学校風土、学級風土をつくることになります。

よい学校風土、よい学級風土があれば、いじめが起こりにくいことも、最新の研究では明らかになっています。

よい風土をつくりだすには、教職員と生徒と保護者の皆様の信頼関係が前提となります。

ひとりでも多くの方が、この記事を読んでいただき、ご理解ご協力をいただければと思います。

「や・は・た」行動

「いじめを予防する」と言ったときに、理念だけに終わるのではなく、それをどう実現するのかということが重要になります。実現するためには、具体的な行動として実行できるようになることが求められます。

公益財団法人「子どもの発達科学研究所」が行なっている「いじめ予防プログラム TRIPLE-CHANGE」という研修があります。その中で推奨している方法が「や・は・た」行動です。詳細については、こちらをご覧ください。

」とは、「めてを言う」

」とは、「その場をなれる」

」とは、「すけを求める」

いじめの加害者に対して「や・は・た」行動を取ることで、いじめ行為をとめる効果が高いことが研究で分かっています。

ただし、いじめの被害者は「アンバランスパワー」により、このような行動をとることが難しいことを以前の記事で紹介しました。(アンバランスパワーについてはこちらをご覧ください。

そこでやはり鍵になってくるのが、いじめ行為を見ていた人(傍観者)です。傍観者が、被害者の代わりに「やめてと言う」「その場をはなれさせる」「かわりに助けをもとめてあげる」ことで、被害者のアンバランスパワーを解消することができます。

(ただし「やめて」と被害者や傍観者が言うのは勇気が必要で、なかなか言うことはできないかもしれません。またいじめ行為をやめさせる責任は学校にあります。その責任を生徒に押し付けるようなことがあってはいけません。)

まずは生徒が「や・は・た」行動をとることが、いじめを防止することに相当な効果があることを知ることが出発点になります。正しい知識が正しい行動につながる、ということです。

「や・は・た」がいじめ予防・いじめ解消に効果があることを是非、覚えてください。