理科は実験や観察をする教科と思っている方も多いと思います。それは間違いではありませんが、ただ実験や観察をするだけでは実際に目の前で起こっていることを理解することはできません。そこで、大手前の理科では基礎基本を大切にしています。基礎基本を学んだ上で、実験や観察をすることにより目の前で起こっていることを理解することができます。これが《読み解く力》です。《読み解く力》が身についていると、起こっていることに対して疑問が浮かんできます。つまり《考える力》が生まれてきます。《考える力》は《読み解く力》によって育つのです。ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎先生は疑問をもつこと、観察を通して考えること、そして問題を解決することをそれぞれ『科学の芽・茎・花』となぞらえました。私たちが掲げる《読み解く力》《考える力》は朝永先生の『科学の芽・茎・花』とも言えます。
また、基礎基本の理解をすることは大事ですが、実際の世の中ではそれを土台にしてさらに発展させることや、新たに創造することが求められます。歴史を見ても科学者たちが分かったことを発表し、議論することで科学は進歩してきました。これには《伝える力》が必要です。私たちはこの《伝える力》を朝永先生の言葉をお借りして『科学の種』と呼ぶことにしました。自分の考えをしっかりとまとめて発表し、他の人の意見を吸収することで「栄養たっぷりな種」が育ちます。私たちは芽・茎・花が成長し、種が実り、さらに次の芽がでる・・・、そのような教育を進めています。
中学では覚えることが増え、また計算も必要になってきます。そのため、教科書で基本を学ぶことがより大事になります。しかし、理科は身の回りで起こることを土台としているので、学んだ基礎基本を観察や実験により確かめ、考える授業も豊富に行っています。さらに総合の時間を利用して、科学的な問題解決能力を育てる「Thinking Science」という授業も行っています。教科にとらわれない、広い意味での科学的な力が身につきます。
コロナ禍で注目を集めているICTですが、あと1~2年もすれば当たり前の環境になるでしょう。大手前には現在、すでにその環境があります。理科の授業でも、配付した資料に疑問があればすぐにインターネットで調べることができます。実験の結果もロイロノートやグーグルのアプリを使ってまとめ、その時間の中で生徒同士で共有します。ICTが当たり前の道具として使える授業の中で、生徒は主体的に、よりたくさんのことを学べます。
中学では『科学の芽・茎・花、そして種』を育て、高校ではさらに本格的な学問へと昇華させていきます。その到達点の1つに大学入試があると考えています。大手前では高2~高3にかけて授業と並行して演習問題に取り組みはじめ、高3の1学期には教科書の内容を終え、大学入試に向けた演習中心の授業になります。また、個別の添削指導もきめ細かく行っており、意欲のある生徒はどんどん伸びる仕組みになっています。