職員研修(新入試に向けて)

更新日:2019年11月05日

10月21日(月)に、大学入学共通テストの対策のための職員研修を実施しました。

 これまでに各教科のなかで進めてきた、大学入学共通テスト試行問題の分析、および、新入試に向けての対策について、英数国理社の5教科の教科主任が発表し、全教員の共通理解をより深めました。


<英語>

1.大学入試英語成績提供システム

 同システムの説明と、各大学の活用方法についてまとめました。

 本校では中1から毎年1回、学校会場で英検を受験しています。高3の4月に英検を受験します。スピーキングへの対策として、外部模試でタブレットを用いたスピーキングの受験を行うことをはじめ、ICTを用いたスピーキング対策について、主任から説明されました。

 なお、111日に、このシステムの導入は見送りとなり、英語民間試験の実施については令和6年度から(現在の中学1年生から)となることが発表されました。しかし、同日の文部科学大臣のメッセージでも「高校生にとって、読む・聞く・話す・書くといった英語4技能をバランスよく身に付け、伸ばすことが大切なことには変わりがありません」と述べられているように、英語スピーキングが必要ないということではありません。本校としては、今後も英検を受験するとともに、スピーキングの力を付けるための具体的な取り組みについて、検討を進めて参ります。

 

2.大学入学共通テスト

 現在のセンター試験では、筆記200点(80%)・リスニング50点(20%)ですが、共通テストでは、筆記100点(50%)・リスニング100点(50%)になります。(大学によっては独自の配点に換算される可能性はあります)また、全体として「実用」的な英語の運用能力を試す問題になっています。

 筆記は、発音・文法・語法の問題がなくなりました。また、情報の読み取り・事実と意見の判別の問題などが特徴的です。

 リスニングは、放送が1回のみの問題があること、音声情報と文字・図表など複数の情報を組み合わせて答える問題などが特徴的です。

 低学年から音読とリスニングの演習をしっかりと行うこと、校内の試験の作り方を見直すことなどを検討しています。また、文章を正確に読解するためには文法・語法の知識は欠かせませんし、国公立大学の二次試験などからも文法・語彙問題がなくなるわけではありません。筆記で、発音・文法・語法の問題がなくなったからこそ、これらが決して疎かにならないよう、基礎を早めに固めさせたいと考えています。

 

<国語>

1.記述式問題

 形式面では、新たに記述式の問題が出題されるようになります。これは小問3問で構成されており、問1・問2は40字程度で答える問題、問3は80120字で答える問題になります。

 この問題では、書類や法令などの実用的な文章が題材となっており、「複数の文章・資料を関連づけて読解する力」、「実用的な文章や資料を踏まえて考察する力」、「短い時間で文章をまとめて表現する力」を同時に問われています。

 なお、記述式問題の扱いは各大学に委ねられているので、大学によって評価の重みが異なります。5段階評価を得点換算し、マーク式に対して1~2割の配点としている大学が多いようです。

 

2.マーク式問題(記述式以外の問題)

 本文(特に小説・古文)が短くなっていること、選択肢が短めになっていることから、一見すると記述式問題以外の負担は軽減されたように見えます。

 しかし、現代文・古文・漢文とも、複数の文章や資料・図などを読み解く問題が増えており、資料・文章の「比較」または「関連付け」の設問が多くなっています。現代文では一つの大問に二つ・三つの資料・文章があり、それらを素早く読んだうえで、情報を読み取り、関連付けて解答しなければなりません。古文・漢文でも、設問のなかに会話文が示されるなど、問題文をしっかり読んで理解しないと解けないものが増加しています。

 このように、本文が短くなっているものの、全体としての読解量は増加しているといえ、また、思考力・判断力が強く問われるものになります。

 国語科としては、基礎・基本を徹底し、思考力・判断力・表現力を育成するとともに、幅広いジャンルに触れさせ、一つのテーマについて広げていくことなどを、考えています。

 

<数学>

1.試行問題の傾向

 従来のセンター試験と比べて、内容面でいくつもの変化が見られます。

 全体として、知識を問われるのではなく知識を活用する力が問われている、と考えています。計算量は減少しています。一方で、「対数ものさし」や「血中濃度」など余りなじみのない題材もふくめて長くて読みにくい問題文を読み解く力、必要な情報と必要でない情報を見分ける力、表やグラフの読み取りなど、情報処理能力が求められています。また、センター試験ではほとんど出題されてこなかった分野が出題されていることにも注意が必要です。

 

2.求められる力・これからの数学の授業について

 何よりも教科書内容(公式・解法)の定着が必要であることに変わりはありません。加えて、本質を理解する姿勢が重要になると考えています。従って、計算だけでいいと思わせないことや、証明をきちんとさせることを重視して、授業を進めていきます。

 また、情報処理能力を高めるためにも、授業のなかで、中学生から文章題にもっと触れさせること、日常生活に関連した課題を与えること、応用問題で考えさせること、他人の解答(解法)に触れさせることなどを意識していきます。

 

<地歴・公民(社会)>

1.試験問題の傾向

 全体として、知識量(用語の知識の緻密さ)ではなく、知識の「活用」を見る試験に移行しています。

 すなわち、用語の知識だけで機械的に答えを選べるような、単純な知識問題は激減しています。リード文や資料をじっくりと読まなければいけない問いが増加しています。

 たとえば歴史(日本史・世界史)であれば、文献史料・絵画資料・図版データなどについて、考察や解釈を求める問題が増えています。なかには、汎用的な思考力・判断力で解ける問題だけでなく、史料の性格の理解・資料の解釈・事実関係の検証・歴史的事実の評価など、「歴史ならではの」思考力・判断力を求める問いも見られます。また、特に日本史と地理において、仮説の設定・論証のような探究的な学びの方法論が習得できているかを試すような問題が増加しています。

 暗記科目ととらえられがちな地歴・公民(社会科)ですが、機械的に用語を丸暗記していても考える力が付いていない生徒は、センター試験のときと比べても、さらに点数が取れなくなると考えられます。大学入学共通テストの出題者からの、地歴・公民科(社会科)が単なる暗記教科であってはならない、という強いメッセージが込められていると感じています。

 

2.社会科としての対策

 資料に触れさせる機会を増やし「思考のプロセス」を丁寧に教えることや、公民においては概念やメカニズムの理解に重点を置くことを心がけています。また、教科書の記述の変化を通して学説の変化を伝えることを通して、深い思考や歴史的な探究のプロセスの理解を促します。

 下級生では、地域調査を通じて地域調査の方法を学ばせること(地理)、シンキングツールを用いて歴史にアプローチする学習(日本史)、入試小論文を素材とした学習(公民)などを検討し、低学年から、新入試で求められる学力を伸ばすための取り組みを実践していきます。

 

<理科>

1.新入試で要求される力

 大学入学共通テストの試行問題からは、以下のような力が要求されていると考えられます。

①基礎基本となる知識の単なる暗記に留まらず、その知識に至る過程を理解し原理を説明できる力(論理的思考力)

②実験の意義、手順、考察の流れを首尾一貫して説明したり、実験自体をデザインできる力(論理的実行力)

③日常の現象との対応を科学的に考える力(理想から現実に向き合う力)

 これは、主に理系の生徒が学ぶ専門科目(物理・化学・生物)だけでなく、主に文系の生徒が学ぶ基礎科目(物理基礎・化学基礎・生物基礎)についても、同様にあてはまるものです。

 

2.新入試に向けての対策

 高校3年生で行ってきた大学入試の二次試験に向けた特訓こそが、このような力を育てるうえで最高のアクティブラーニングになっていると考えています。ここに繋げるかたちで、高1のころから、物理を中心に習熟度別の添削課題を実施・継続させ、達成のよろこびを体験させています。

 中1~中2では、総合的な学習の時間のなかで「Thinking Science」を取り入れ、日常的な事象から論理的な力をはぐくむ実践を行っています。さらに今後は、中3~高2にかけて探究活動を通じてこれらの力を伸ばしていけるよう、カリキュラムの見直しを進めているところです。

 この他にも、公式の導出・知識の原理・過程の説明を意識した授業づくり、動画などを利用してイメージする力を育む授業づくりなど、各教員による授業改善のための取り組みもすすめています。

 

3.おわりに

 私たちは、生徒たちが新入試において要求される学力は何か、そのような力を伸ばすためにどのような授業改善が必要かを考え続けています。そして、そのような力を身に付けた生徒たちを大学へ、そして社会へと送り出すことは、「品位ある人格の陶冶と、力の教育とを伝統とし、知性情操の両全を目指し、公共の福祉に貢献できる指導的社会人を育成せんとする」という本校の「建学の精神」を具体化する営みでもあるのではないかと考えています。