初夏🍃の大手前《TSUNAGU》

更新日:2025年05月13日

(この記事は、TSUNAGUの生徒が作成しました。)

 連休も明け、そろそろ新しいクラスに馴染んできた頃かと思います。
 5月にしては涼しく、外を歩いていると心地よい風が吹いてくるので、頻繁に散歩にでかけて植物を見るのですが、そうすると自ずと「よく見る草なのに、名前は知らないなあ」とか「やっぱり綺麗な花を咲かせるなあ」と思うことが多くなるので、改めて道端や学校にある、この時期に見頃を迎えた草木について調べてみました。
 連休前後、体育や部活などでグラウンドに行くと、あたりになんとも言えない芳香が漂っていたと思います。
 この正体はニセアカシアの花の匂いです。グラウンド横で美しい花を咲かせていましたよね。


 ニセアカシアは、別名をハリエンジュというマメ科の落葉高木です。
 地中にいる根粒菌という菌類と共生しており、植物にとって大事な成分である窒素を自ら安定して供給することができ、「やせた」土地にもしっかりと根付くので、緑化植物として植えられることが多いです。実際に足尾鉱毒事件によって荒廃した山林の再生にも活用されました。
 また、蜜源植物としても非常に重要な役割を持っています。「アカシアはちみつ」というと、ミツバチがこの木の花からとってきた蜜のことを指します。
 このように、「環境改善」「食生活」と、ニセアカシアは様々な面で人間の生活と密接に関わってきました。
 小さな花が房になって咲いていますが、その一つ一つをみると、表からは雌しべや雄しべを見ることができないことがわかります。一体どこに隠れているのでしょう。


 よく観察すると、一つ一つの花は、縦に立ち上がった黄色い筋の入った1枚の花弁(旗弁)と、左右1枚ずつに広がる花弁(翼弁)、そしてその真ん中に下側で合着する2枚の花弁(竜骨弁)の3種類の花弁で構成されているのが分かります。
 そしてこの「真ん中に下側で合着する2枚の花弁」を指で押し下げて中を見てみると、そこには雄しべと雌しべが入っています。(!!!)


 このような構造をした花を「蝶形花」といい、ほとんどのマメ科植物に見られます。

 どういう計算でこのような手の込んだ花を作ったかというと、

1. 花にやって来た虫が、雌しべ雄しべの付け根にある蜜を吸うため、翼弁に脚をかけて旗弁の基部に   口を突っ込む
2. 体重をかけられた翼弁が下がる、それに伴って竜骨弁も下がる
3. 竜骨弁から雌しべと雄しべが出てくる、虫花粉まみれ
4. その虫が他の花にも移ってこれらを繰り返す

というわけです。驚愕しますよね。

 皆さんも、これからこういうマメ科の花を見つけたら、植物を傷つけない程度に、この「翼弁および竜骨弁押し下げ」の動作を行ってみてください。そうすると必ず雌しべと雄しべが中から現れます。それだけのことですが、どこか楽しく、多少なりとも植物達のかしこさに関心するはずです。

 2つ目の植物をお見せします。
 道端を歩いていると、深い切り込みの入った葉と薄桃色の可愛らしい花の草本を見かけることがありませんか。


 これはアメリカフウロといって、北アメリカ原産の帰化植物です。美しい見た目から日本に導入されましたが、適応力が高く病害虫にも強いことから全国に広がってしまいました。
 3つ目、4つ目の植物です。
 植物は、花が終わったからと言って魅力がなくなるわけでなく、その次の実の姿や、花に隠れて見えなかった部分にも十分みどころがあります。
 ヤマザクラやサンシュユも実が育っている途中でした。この花弁のような部分は花ではなく、花弁をささえていた萼です。

▽サンシュユ


▽ヤマザクラ
 これもサクラの実ではありますが、ヤマザクラの実は皆さんが想像する「さくらんぼ」のように大きく甘く熟すことはありません。
 普段お店に並んでいるのは、セイヨウミザクラというほかのサクラの一種の実です。


 自習室横にはハナミズキの木があります。
 北米原産で、日本がワシントンD.Cへ贈ったサクラの返礼として送られたこともあります。アメリカ北部にあるメイン州などでは、春の終わりに日本でいうサクラのように「ハナミズキ開花前線」が報道されることもあるそうです。
 大手前のハナミズキは、建造物や他の樹木に横方面を遮られているので、葉や花を水平方向に展開しています。


 この優しい印象の美しい花ですが、実は白い花弁のようなものは「花」の部分ではなく、「苞」という花の基部の葉が特殊化したものなのです。(ハナミズキのように苞が複数枚集まったものは総苞といいます。)
 花は中央に半球状に集まって咲きます。


 6つ目は、「レッドロビン」です。
 レッドロビンとは、カナメモチとオオカナメモチを交雑した園芸品種のことをいい、セイヨウカナメモチともよばれます。
 扇の骨組みの部品である「要」にこの材が使用され、モチノキに似ていることから要黐(かなめもち)と言われるようになったそうです。


 花はこんなに可憐なのに、その匂いを嗅ぐと思わず顔をしかめてしまうほど独特の臭気があります。
 この臭いはオオカナメモチ由来のようで、アミノ酸の一種であるアルギニンが酸化することが原因のようです。


 最後に紹介する7つ目の植物は、カタバミです。
 葉の形状が似ていることからシロツメクサ(クローバー)と間違われることもありますが、分類的にも全く異なる植物です。


 このカタバミ、実は美味しく食べられるのを知っていますか。「シュウ酸」という酸味成分が入っており、一部のフランス料理の食材に使われることがあるそうです。また日本でも、戦時中には貴重な食料源として利用されました。
 シュウ酸は、ホウレンソウや紅茶にも豊富に含まれていますが、摂取しすぎると尿路結石になる恐れがあるので、ほどほどにして皆さんもぜひカタバミを楽しんでみてください。


 どんな植物でも、たくさん生えているから、花の時期が終わったからなどと言って、決して侮ってはいけません。よく観察すれば、必ずどこかにその植物にしかない美しさや歴史があるはずです。

(文・写真:中3TSUNAGU )