学校案内
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(この記事はTSUNAGUの生徒が作成しました。)
寒さは少し遠のきましたが、陽気の暖かい春が待ち遠しい今日この頃ですね。
3月1日(土)、丸亀城内の植物観察会を開催しました。
今回、初の試みとしてHPで一般参加者を募集し、合計4名の方が参加としてくださいました。
ご参加くださり、ありがとうございました!
1つの樹木について1つか2つほどのクイズを出していくという形式で、今回では樹木医である高橋瑞貴先生だけでなく、私達生徒も運営に参加しました。
どのような植物をどのような視点で観察していったか、皆さまにも紹介していきます。
まず1つ目は「ホルトノキ」です。ホルトノキは常緑の美しい葉を持つ木で、常に一部紅葉した葉が見られます。
ホルトノキは、とある特別な由来でこの名前がつけられました。その由来とは一体なんでしょうか。
1.電圧の単位である「ボルト」から
2.「ポルトガル」という国名からとった
3.その木がある所を掘ると(ホルト)お宝が沢山出てきたことから
正解は…⇓
2.「ポルトガル」という国名からとった
でした。
昔、とある人がこの木を実の見た目がそっくりのオリーブと勘違いし、当時ポルトガルの油と呼ばれていたオリーブ油が採れると思い、「ポルトガル油のとれる木」と紹介してしまいました。
それが由来で「ホルトノキ」という名前になったのです。
先ほど「とある人が」と言いましたが、実はその人は今でもよく知られる歴史的人物です。
さて、それは一体誰でしょう。
1.豊臣秀吉
2.牧野富太郎
3.平賀源内
▽オリーブ
▽ホルトノキ
答えは
3.平賀源内
です。様々な領域で名を残し、エレキテルなどを開発した有名な科学者ですね。香川県出身であることもよく知られています。
2つ目の樹木は「イヌビワ」です。
名前には「ビワ」とつきますが、イチジクの仲間で、実の中に花がついています。ですから、風の力をつかって花粉をとばすことができません。そこで、「イヌビワコバチ」という小さなハチに実の中に入ってもらい、花粉を運んでもらっています。その代わりこのハチはこの実の中を安全な産卵場所として使っています。
しかし、イヌビワコバチのなかには、イヌビワの実の中で一生を終えてしまう個体がいます。それはどんな個体でしょう。少し考えてみてください。
答えは…⇓
▽イヌビワの実
答えは「雄の個体」です。
イヌビワコバチは、イヌビワの実の中で生まれ、中の果肉を食べて成長します。ここまでは雌雄ともに同じなのですが、雄のハチだけは実の外へ出ず、雌のハチと交尾をするだけで死んでしまいます。
このようにして、イヌビワとイヌビワコバチは助け合いながら命を繋いでおり、互いに不可欠な関係にあります。自然界の中には、ほかにも似たような関係を持つ生き物が沢山います。どのようなものがあるか考えてみるのもいいですね。
3つ目に観察したのは、クスドイゲです。
クスドイゲはヤナギ科の常緑低木で、成長するとその姿が大きく「変身」します。ですから本会ではこの木だけ幼体(まだ子どもの木)と成体(大人になった木)というふうに区別して観察しました。
まず大人の個体を見ると、枝の様子は普通なのですが、樹皮は荒々しく剥がれているのが目につきます。クスド「イゲ」という名前からも姿がとげとげしていることが想像できますね。
さて、成体の姿と幼体の姿でどのような違いがあるのでしょうか。当ててみてください。
1.子どもには樹皮にも枝にもトゲが生えている
2.子どもの樹皮のみトゲが生えている
3.子どもの枝のみトゲが生えている
▽クスドイゲの成体
正解は、1.子どもには樹皮にも枝にもトゲが生えている
でした。
そもそもこの木は、鹿などの動物に葉を食べられてしまわないように「物理的防御」の術としてトゲを出しています。ですから動物の背が届かない所にまでトゲを出す必要はありません。つまり、まだ樹高の低い幼体は、全身にトゲを出して動物を追い払わなければいけなく、大きくなった成体は、高いところにある枝のトゲは引っ込めて、動物が木をよじ登ることができないように樹皮にだけトゲを出しておけば良いのです。
しかし、このようにわざわざ「とげ」という器官を大量に作り、維持するのには、膨大なエネルギーが必要となりますよね。それを補うにしても根を長く伸ばしたり葉の光合成のサイクルを早めたりするのにまたエネルギーが必要となり、大変です。
トゲを出せば動物からは身を守れるが自分は凄く疲れてしまう、一方でトゲを出さなかったら自身は疲れないが動物に葉を食べられてしまう。どちらの要素を選択した植物もいますが、より賢いといえる生き方は、一体どちらなのでしょうか。
4つ目の樹木は「アベマキ」です。
大抵秋から冬にかけてのアベマキの周りには、こんなものが落ちています。
そう、アベマキはどんぐりの木です。一般的にブナ科の樹木にはどんぐりがなります。
ところでドングリは自然界で動物の食べ物として非常に重要な役割を持っていますね。
主にどんな生き物がドングリを食べているか、知っていますか。該当するものを選択肢からすべて選んでください。
1.クマ
2.高橋先生
3.イノシシ
4.リス
分かりましたか。答えは…⇓
▽アベマキ
1から4のすべて
でした。
山の獣がどんぐりを食べているところは容易に想像できますよね。でも高橋先生がどんぐりを食べているのは、ちょっと意外に思う人もいると思います。
これはとある日の高橋先生の食卓です。
チキンやサラダとともに皿に入れられたドングリが並んでいますね。高橋先生曰く「水でゆでただけ」だそうで、味はほのかに甘い栗で、食感も似ておりとても美味しいそうです。
ドングリは、獣が好きなだけでなく、工夫次第でいろんな人の大好物にもなりえるほど美味しい食べ物なのです。それどころか、縄文時代には人類も貴重な冬季の食糧としてドングリを食べていました。今ではドングリを食べている人の方が珍しいですが、縄文時代に人々がドングリを食べていなかったら、今の私達は存在していません。
この秋、先人の方々とドングリに感謝して、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
アベマキを観察したあと、少し休憩を挟みました。
私とほか数名はその間ハトを観察していたのですが、見れば見るほどハトはとても美しい鳥だなあとしみじみ感じました。
見る角度によって違う色に輝く羽や真っ赤な目が素晴らしいと思いませんか。
5つ目は、クスノキです。
病気に強く、いろんな所で大木になっているのが見られるこの木は、ある性質から代々人々に利用されてきました。
クスノキの葉には、樟脳(しょうのう)と呼ばれる独特の芳香がする有用な成分が入っており、成分を集めて袋に詰め、タンスに入れて使われました。
さて、その成分とは、一体何に有用なのでしょうか。
1.虫を引き寄せる
2.虫を追い払う
3.小動物を追い払う
答えは
2.虫を追い払う
でした。
樟脳は強い忌避成分として知られ、防虫剤として使うとトコジラミなどを防ぐことができます。また樟脳を蒸留する過程で出た油(樟脳油)は、シロアリの予防剤にも使われ、さらに人間には鎮痛や清涼感を与える効果があることが分かっており、アロマや医薬品に使われることがあります。
クスノキは、その木材も非常に丈夫で、実際に厳島神社の鳥居にはこのクスノキの材が使われているそうです。
このように、クスノキは幅広い用途で利用され、人々の生活を古くから支えてきました。
最後に観察した樹木は、「クロマツ」です。
やはり、「マツ」といえば、「松ぼっくり」ですよね。松ぼっくりは手軽に入手できるうえに、その可愛らしい見た目から、自然物のオブジェとしてとても人気です。
しかし松ぼっくりは、水に濡らすと丸っこい姿が一変し、周りの部分が閉じて細長い見た目になります。このような現象が起こるのにも、大切な理由があります。それはなんでしょうか。
1.中のものを濡らさないため
2.水に浮くため
3.風で飛ばないようにす
▽左が乾いた状態、右が濡らした状態
答えは
1.中のものを濡らさないため
です。
松ぼっくりの中には無数の種子が入っており、またその一つ一つに、風に乗って遠くへ飛ばすための翼のような器官がついています。ですから、中に水が入って濡れてしまうとそのせっかくの工夫が台無しになってしまい、種子を遠くへ飛ばすことができなくなるのです。
今回の観察会で私達が一貫したテーマとして掲げたい言葉は「共生」です。
植物だけでなく、あらゆる自然のものがあったからこそ今の私達があります。それは人類が彼らにしてきた名付けや、文化的、科学的な利用を続けてきた痕跡から容易に分かる事です。
しかしながら、今の日常生活の中ではそういった過去と今の繋がりに目を向ける事がほとんどなく、結果「個人」と「自然」の間にある距離が、感覚として段々と開いて行っています。
そこで自発的にフィールドに赴き、実際に触れながら知識を取り入れ、自分と自然が密接に繋がっていることに実感を得ることで、今大きな課題とされている環境問題を身近なものと置くことができます。そうすれば、少しでも具体的な解決策が広がり、人類と地球の理想的と言える「共生関係」に近づく一歩となるのではないかと考えます。
最後になりましたが、この観察会は「環境を守り育てる地域づくりモデル事業」の一環として実施しました。本校は2023年7月~2025年3月まで香川県環境政策課より、1年9か月の間、環境に関する様々な活動を支援していただきました。大変お世話になりました。ありがとうございました。
(文:中2TSUNAGU)