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和久田学さんの「科学的に考える子育て」という著書には、「叱る」ことの副作用について記述されています。
その著書に示されている具体例を紹介します。
怖い工場長と社員が登場します。
怖い工場長が作業中におしゃべりをしている社員を大声で怒鳴ります。工場長に怒られるのは嫌なので社員は黙ります。怒鳴ったことで社員が黙って仕事をするようになり、工場長は満足します。
ところが工場長は来客の対応をしたり、本社に呼び出されたりして、工場にいないことがよくあります。
さて、工場長がいない時に工場にいる社員はどうなったでしょうか?
社員の気持ちになって考えてみましょう。
もちろん工場長がいなくなれば、社員はよりおしゃべりをするでしょうし、工場長の文句を言っているかもしれません。
ここでは「弁別の法則」「派生の法則」という副作用が起こっていると述べられています。
「弁別の法則」とは、工場長がいるところでは黙って作業をするが、ひとたびいなくなればおしゃべりをして作業をしなくなるわけですから、「条件の違いによって行動を変えてしまう」ということです。
これは怖いことで、「怒鳴る人の指示を聞く」ということは、裏を返せば「怒鳴らない人の指示は聞かなくてもよい」という悪い学習をしてしまっています。
「派生の法則」とは、諺で言えば、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というのと同じで、怒鳴る工場長は好きにはなれないので、怖い工場長が例え的確な指示を行ったとしても、工場長を嫌っている社員はそれを素直に受け入れられなくなるということです。
さらに「反発の法則」も生じます。押さえつけようとすればそれに反発したくなるというのは、誰しもが経験することです。これが押さえつけようとする人に対する反発ならまだしも、弱い立場の人に対して「八つ当たり」が起こることもよく知られていることです。
一方で、怖い工場長は社員が黙々と作業をしているので、自分が怒鳴ったことがよいことだと思い込んでしまいます。そうなってしまうと工場長と社員のボタンの掛け違えが直ることはありません。とても恐ろしいことだと思います。
和久田さんの著書では、上記のことを「応用行動分析」という科学的(=客観的な証拠や根拠がある)な方法を用いて説明がなされています。
もちろんこのような状況に陥らないための解決策についても提示されています。
「叱る」ような場面というのは、基本的に「失敗する」場面です。
ではそもそも失敗をしにくい場面をつくることで上記のような負の側面を解消できるのではないかというのが解決策です。
つまり、なぜ失敗してしまうのかといえば、「課題設定」と「環境設定」に問題があると考えられます。
例えば、小学生に高校生の数学の問題を解かせようとすればほとんどの小学生が解けません。課題が難しすぎて失敗するこということです。
また、周囲の人たちが騒いでいる中で、ひとりだけ静かにしている、ということは難しいと思います。つまり環境が整っていなくて失敗するということもあります。
その子に応じた課題設定と環境設定を大人が準備することで、お互いにとって無用な「叱る」ということをしなくてすむだけでなく、その子が「できることが増える」というよい循環をつくりだせるというのが基本的な考え方です。
<まとめ>
「叱る」には大きな副作用がある。「弁別の法則」「派生の法則」「反発の法則」など。
そもそも「叱らない」ようにすれば、副作用は起こらない。
叱らないようにするためには、その子に応じた課題設定と環境設定を大人が準備すればよい。
そうすれば、子どものできることが増えて、叱らずにすみ、また褒めることができて、お互いにとってよい関係が築ける。