勉強の基本(コラム)

更新日:2023年03月08日

「わかる」とはどういうことかー認識の脳科学(山鳥重)という本があります。

 山鳥さんは著書の冒頭で「日常の営みとして「何かについて」考えることは誰もがやっていることですが、その日常の営みである「考えること自体について」考えることは、誰もがやっているわけではありません。」と述べています。

 多くの人が勉強ができるようになりたいと思っていますが、勉強方法そのものに意識を向けて、どうすれば「わかる」ようになるかを理解している人は少ないのかもしれません。

 やみくもに勉強をするよりも、どうすれば「わかる」ようになるかを考えて、その方法を試してみれば、「わかる」ということを積み重ねることができ、勉強が得意になっていきます。

 そこで有用であるのが脳科学の知見です。

 山鳥さんの著書には、まず「わかる」ための土台は、「知覚」であると述べられています。知覚とは、簡単に言うと、五感です。五感をうまく働かせるためには、「注意」が必要です。この注意は、好奇心と言い換えるとわかりやすいですね。好奇心があるから五感を働かせて、自分の興味がある情報を脳内に送りこんでいきます。

 脳内でどのような情報処理がなされているのでしょうか。

情報は、基本的には「区別」されたり、「同定」されたりします。

自分の経験や知識と入力された情報を照らし合わせて、「違う」と「同じ」を判断していきます。

例えば、聴覚。「ド」「レ」「ミ」・・・・。当たり前の話かもしれませんが、「ド」と「レ」は違っています。「レ」と「ミ」も違っています。「ミ」と「ミ」は同じです。「ド」を「ミ」と知覚すると、楽器を弾いて演奏することはできません。この当たり前のことが基礎となって、音楽が成り立っています。そしてこの基礎をより高度化し、複雑化したものがオーケストラの音楽であったりします。

 繰り返しになりますが、高度化され、複雑化して、私たちに感動をもたらすような音楽の基礎は、「ド」「レ」「ミ」を区別したり、同定することで成り立っています。

 数学の基礎についても同じことが言えます。2+2+3+2+2+3+2+2+3+2+2+2=?
これをひとつひとつ計算することは面倒です。

 2と3は「違い」ます。2と2は「同じ」です。これも当たり前のことかもしれませんが、上記の計算では、この「違い」と「同じ」が使われます。

 2が9つあると数えて、2×9のように「同じもの」をまとめます。3が3つあると数えて3×3のように「同じもの」をまとめます。

2+2+3+2+2+3+2+2+3+2+2+2=2×9+3×3=18+9=27

 たくさんあるものを「同じ」と「違う」を区別しながら「整理」し、そして「=」つまり「同じ」を表す記号を用いて、計算を早く簡単に正確に行うことができます。

 私たちは、脳の中で、好奇心と五感から得られた情報をこれまでの経験や知識と照らし合わせて「同じ」「違う」ということを判断し、それを組み合わせながら物事を考えています。

<まとめ>

勉強(脳の働き)の基本は、「同じ」と「違う」を整理整頓して判断すること。

これを多くの人は無意識にやりますが、はっきりと意識化することで、脳の働きに沿った勉強ができるようになります。

脳科学に興味がある人、さらに詳しく知りたいと言う人は是非、山鳥さんの著書を読んでみてください。